スピネルspinel MgAl2O4
〜鉄スピネルhercynite FeAl2O4
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等方体。n=1.719〜1.835(Feに富むものほど高い)

色:Mgに富むものは無色,Feに富んでくると緑色を帯び,鉄スピネルや亜鉛スピネルは暗緑色。

形態:8面体の自形の断面が4角や6角に見え,半自形の粒状や集粒状のものも多い。

へき開:認められないが,時に裂開が(1 1 1)方向に認められる場合がある。

双晶:(1 1 1)の双晶(スピネル双晶)があるが,等方体なので,形態的にわかるだけである。双晶したものは(1 1 1)面が発達した三角板状で,それは短冊状の断面に見えることがある。

累帯構造:平行ニコルで色の違いでわかることもあるが,普通はあまり認められない。

産状

スピネル〜鉄スピネル系は石英とは共生せず,ケイ酸に乏しい高温の変成岩中に産する(スピネル+石英の組み合わせよりも菫青石が常に安定)。
Mgに富むものは高温の広域変成帯の片麻岩に挟まれた変成ドロマイト(石灰質片岩)中に金雲母・苦土かんらん石・燐灰石・コランダムなどに伴い,粗大な透明な自形をなす場合もあり,ほぼ無色(肉眼的には赤・紫・青など)で,このものはコランダムと共に宝石になるものがある。また,高温の広域変成作用の過程で片麻岩と超苦鉄質岩の境で片麻岩が超苦鉄質岩による脱ケイ酸作用を受けた部分に真珠雲母・コランダムなどと共に多産することもあり,このものはスピネル−鉄スピネル中間体(プレオナストなどと呼ばれる)で,暗緑〜灰緑色である。
接触変成岩ではドロマイトスカルンにヒューム石族鉱物・かんらん石などのケイ酸分に乏しい鉱物と共に,再結晶化してできた方解石中に無色や淡灰〜淡灰緑色の粒状で散在する。また,玄武岩マグマに取り込まれた泥質岩(パイロ変成岩)中にムル石やコランダムなどと共にスピネル〜鉄スピネル中間体(プレオナスト)が暗緑色〜灰緑色粒状で見られることもある。そのほか,苦鉄質岩(はんれい岩・玄武岩)が花こう岩による接触変成作用を受けた部分に金雲母・電気石・角閃石などと共生した灰緑色微粒集合体をなすこともある。

火成岩では,パーアルミナスな安山岩中にアルマンディン・ケイ線石・菫青石・十字石などに伴い,まれに副成分的に粒状で少量含まれることがあり,このものはZnに富む亜鉛スピネルのことがある。亜鉛スピネルは灰緑〜暗緑色で石英と共生でき,ペグマタイトに見られることもある。なお,パーアルミナスな玄武岩からは粗粒なプレオナストがコランダムと共に多産する場合がある。



ドロマイトスカルン中のスピネル Sp:スピネル,Ol:かんらん石,Cal:方解石

ドロマイトスカルン中にかんらん石やヒューマイト系鉱物などのケイ酸分に乏しいスカルン鉱物と共に,再結晶化してできた方解石中に粒状で散点状に見られるもの。平行ニコルではかんらん石と紛らわしいが,無色以外に,上画像のように灰〜灰緑色に色づいていることがあり,また,クロスニコルでは暗黒なので区別できる。
一方,片麻岩地域でドロマイトが広域変成してできた石灰質片岩中にも同様に産し,この場合は粗粒で,コランダムと共生することが多い。





接触変成作用を受けたはんれい岩中のスピネル 
Sp:スピネルTor:電気石,Amp:角閃石類,Pl:斜長石

はんれい岩や玄武岩などの苦鉄質岩が,花こう岩による接触変成作用を受けた部分に,電気石・角閃石類などと共に接触変成鉱物として見られる粒状のスピネル。これは濃い緑色で鉄スピネル成分に富み,円内はその微粒集合体で屈折率の高さにより泡立ったように見える。

なお,接触変成作用では,もとのはんれい岩の有色鉱物は金雲母・スピネル・緑色の角閃石などに変わり,斜長石は累帯構造が消失したり再結晶化するほか細かい斜灰れん石やぶどう石などになる。





安山岩中のスピネル(亜鉛スピネルとの中間体) Gn:スピネル,St:十字石
火成岩にスピネルが産することはまれだが,パーアルミナスな安山岩中にアルマンディン・ケイ線石・菫青石・十字石などに伴い,副成分的に微粒で少量含まれることがある。画像のものは著量のFe・Znを含み亜鉛スピネルとの中間体で,火成岩では珍しい十字石と共生し,この十字石にも若干のZnが含まれる。亜鉛スピネルは灰緑〜暗緑色で,スピネルや鉄スピネルとは異なり,石英と共生でき,ペグマタイトに産することもある。